東京大学横山研究室

東京大学横山研究室

Group 2 reflection day 3

本日の講義の要約

富士通の方々より、地震や津波からの避難に活用されるシステムの開発に関する紹介があった。避難の必要性の度合いや避難所の混み具合や滞在者の年齢層を測定、算出するだけでなく、感染症が蔓延した場合のリスクまで計算することができるそうだ。たくさんのシミュレーションや住民からのフィードバックを繰り返し、システムの改善に努めている。質問ではシステムの正確性や、スマートフォンを使用することの是非に関する質問があった。
富士通のコンピュータ開発の歴史や開発の方針、量子コンピュータ開発に関する展望についての説明があった後、川の水位予測システムについてのお話をしていただいた。複数の観測点の降水量をもとに洪水や推移変化を予測するシステムである。
次は保険に関する授業だった。一部の保険が加入必須と定められている理由など、保険に関する包括的な説明の後、COVID-19の事例を例に挙げた授業になった。人流の増減と売上高などの関係に関しての考察が行われた後、休業要請に伴う補償の話題に移った。東京商工リサーチなどによる企業の信用度の評価に基づいて補償の有無や程度が決められる。信用度スコアが低い割に充実した補償の恩恵を受けているように見受けられる企業があるがその理由は何なのか、という質問に関しては、災害(疾病も含む)時の補償はできるだけ迅速に行われるべきであるために査定にあまり長い時間をかけられないことが原因だとお答えになっていた。
その後は津波の被害を受けた学校やその周辺地域を紹介するビデオを見た。2階のバルコニーが破壊されている様子や、校舎の中に車が流れ込んできている記録映像を見た。
昼休みにはサンゴに関する講義が行われた。海の中でサンゴが生息する区域は少なく全体の数パーセント程度だが、海の環境、生態系に非常に大きな影響を与えている。

午後の大部分は大槌町の被災経験に関するワークショップだった。
ビデオ中継では、大槌町の、震災時の様子やその後の復興についての説明がなされた。昼休み前に説明を受けた荒浜小学校では、屋上に避難した人たちが無事助かったのに対し、大槌町では、建物の上の階に避難しようとした人たちが、梯子を登りきれずに渋滞して津波に巻き込まれてしまったという悲惨な出来事があったと聞き、やりきれない気持ちになった。また、その後の復興をめぐっては、高台があっても、長く急な階段を高齢者や障害を抱える人が迅速に登って避難するのは困難であり、解決を要する重大な問題だと感じた。
実際に災害時に判断を下さなければならなくなったという状況を想定し、3つのディスカッションが行われた。
①助かる見込みの高い母親と、怪我の程度が分からず助かる見込みがどれぐらいあるか分からない子供 のどちらの移送を優先するべきか(一人しか運べない)
②大槌町に津波を防ぐための壁を再構築する場合、高い壁(2011年と同レベルの津波が来た場合に、ある程度被害を軽減する)と、低い壁(小規模な波に対しては有効だが2011年と同程度のものが来れば無力)のどちらを建設するべきか
③地震、津波でダメージを受けた市庁舎を残すべきか壊すべきかということ
というテーマで、それぞれの話題についてリーダーを設定して議論が行われた。
正解、不正解がない問題に対して議論し合意を形成することの難しさを学んだ。利益を増やすことが共通目標である企業とは違い、地域のコミュニティには違う価値観や優先順位を持った人々が集まって暮らしている。だから合意の形成が難しい。
合間には自治法に関する話があった。災害の被害によりトップに立つ者が指揮をとれなくなった場合どうするのか。市長が指揮をとれる状況ではなかった場合副市長が大体的な役割を担うが、副市長の任期が終了したらどうなるのか(選挙が行えない場合)。

議論、感想

・年齢を予測するAIの仕組みが気になった。恐らく顔と年齢のセットを大量に記憶しているのだろう。現在日本人にしか対応していない理由はそのデータのセットが日本人のものに限られたからであろう。

・荒浜小学校の東側、特に2階部分が激しく損傷している様子は、津波が襲った痕跡を如実に表していて、強く印象に残った。

・震災時の大槌町で、女性が祖母の手を引いて丘を登る途中、手を離してしまった祖母が行方不明になってしまった話は、聞いていて胸が痛んだ。災害は、発生したその当時だけでなく、その後何年にもわたって被災者の生活に重大な影響を与えるのだと、改めて実感した。

・場所によって、津波の高さや被害の程度に違いが見られる理由が気になった。震源からの距離だけでなく、海岸線の形も影響しているかもしれない。

・ワークショップのディスカッションについて
一つ目のテーマに関しては、最初意見が半分ずつに分かれたが、そもそもの前提条件の認識に微妙な齟齬があり、その認識を修正した結果子供を救うということで合意を形成した。3つの中で最も難しい議題だと感じた。
二つ目のテーマは全会一致で低い壁を選んだが、理由づけに関しては複数の異なる視点による考察が行われた。壁の建設以外にも災害の被害を減らす方法はあるという意見が大半であったが、高い壁を建設することで根拠のない安心感を生み、実際に津波が来た際に避難をしない、または緊迫感を持たない住民が増えるのではないかという視点も提示された。
三つ目のテーマも難しい問題であったが、災害の恐ろしさを記録として後世に引き継ぐために被害を受けた市庁舎を保存するべきという考えが最も説得力を持っているように思えた。なぜその建物に限定されるのか、他のより小さな建物などではいけないのかという意見が提示されたが、恐らく市が管理している建物を残すのが最も簡単であるからという理由と、市役所は市の象徴的役割を持っているからという理由があると思う。

重大な判断を下す立場になったときに良い判断を下せるよう、たくさんの情報に触れる必要があると感じた。

               

Yokoyama Lab,
Atmosphere and Ocean Research Institute,
The University of Tokyo

5-1-5,Kashiwanoha,Kashiwa-shi,Chiba 277-8564 Japan

               

Phone: +81-80-7130-1438

   
Copyright © 2024 Yusuke Yokoyama Lab. All Rights Reserved.
トップへ戻るボタン