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中・低緯度の環境変動

 赤道域、特に西赤道太平洋は、表層水の温度が高く、地球のヒートエンジンとしての役割を果たしています。この地域の変動によって引き起こされるENSO(エルニーニョ南方振動)やモンスーン変動などについて、サンゴ試料や海洋・湖沼堆積物そしてモデルを用いて研究しています。

サンゴ骨格の化学分析

サンゴはイソギンチャクなどと同じ刺胞動物ですが、外骨格として炭酸カルシウムの骨格を形成するのが特徴で、サンゴ礁を形成するサンゴは造礁サンゴと呼ばれます。この造礁サンゴは体内に褐虫藻が共生の形で多数存在し、サンゴはこの褐虫藻による光合成産物をエネルギーとして利用しています。


サンゴは海水中のカルシウムイオンと炭酸水素イオンを用いて炭酸カルシウムの骨格を作りますが、その際に海水の水温や塩分などの情報も骨格に取り込みます。この骨格は樹木のように季節による年輪が見られ、ハマサンゴ属のような塊状サンゴは骨格が1年に1~2cmほど成長し、中には直径3~5mまで成長するような大きな群体もあり、このようなサンゴ骨格には過去数百年間の海水の情報が記録されていると考えられます。化石のサンゴにも同様の情報が記録されているため、放射性炭素年代測定法などによってサンゴの生きていた時代を特定することで、例えば5000年前の海の水温や塩分を高時間分解能で復元することができます。

サンゴ骨格中の化学組成分析から、過去の海洋環境について様々な情報が得られます。例えば、サンゴ骨格中のストロンチウム/カルシウム比(Sr/Ca)からは、表層海水温が復元できます。酸素同位体比とSr/Ca比を組み合わせると、表層海水の塩分も復元できます。また、ホウ素同位体比を分析すると、海水のpHを復元することも可能です。

私たちは、主に過去2万年間の中低緯度における気候・海洋環境変動の解明を目指して、沖縄やフィリピン、タヒチなどのサンゴを採取し、様々な化学分析を行っています。復元された過去の海洋環境の情報から、モンスーンやエルニーニョといった気候システム変動について考察を進めています。

堆積物の化学分析

準備中


古気候復元と大循環モデルの統合

2007年に発表されたIPCC第4次報告書では、気温上昇予測に関しては、異なる気候大循環モデルの予測が比較的一致した傾向が示されています。しかし一方で、水循環変動予測の高精度化が、将来の課題として挙げられています。さらに、古気候データとモデルとの綿密な比較による、モデルの動作特性の定量的評価が必要とされています。

水循環の変動は、温暖化に伴う干ばつや洪水の予測に重要です。特に東アジアから南アジア地域においては、世界の人口が多く集中し、モンスーン変動などに伴う水循環の変動によって生活環境が大きく影響を受けます。これらの地域の環境政策に、水循環変動予測の高精度化は大きく貢献します。

そこで私たちは、海洋研究所、気候システム研究センター、海洋研究開発機構などと共同で、サンゴを採取・分析して古気候データを解析・復元する地球化学者と、モデルを扱う研究者で構成されるチームを組みました。サンゴ骨格分析による古気候復元データと、地球シミュレータを用いた気候変動モデル(MIROC)の計算結果とを比較することで、より定量的に水循環メカニズムの解明を行うことができます。